体癖の智慧の活かし方~パート4(健康・病気編1)~


 

 「五行類型論(体癖)」の活かし方において、今回のテーマは健康・病気についてです。

 

 活かし方として番目に取り上げることになってしまいましたが、本来このテーマが最も関係が深く、有用に使いこなせるかもしれません。

 

 そもそも体癖は、それを提唱した野口晴哉氏が整体師として主に患者さんに整体を施すなか発見されたものです。

 

 また五行類型論(体癖)は、陰陽五行思想の流れを汲み、主に生理機能の違いによる分類法で、そこから生じる様々な特徴を整理・分類したものですから、とうぜん中医学とも密接に関連しています。

 

 五行類型論(体癖)に係る各個人の生理機能の差異は、体質全般から、かかり易い病気や症状、症状の現れ方や病気の経過、また治療方法にまで及んでいます。

 

 医療関係者、特に中医学を理解していないと難しいかもしれませんが、簡単な基本を理解すると、日常生活においてとても上手く活用することができると思います。

 

 私も元薬剤師で中医学を学んだ一人として、このテーマにおける五行類型論(体癖)の智慧の活用方法を述べたいと思います。

 

 初めに陰陽五行思想から生まれた中医学の生理学を簡単にご紹介します。

 なお、中医学の生理学は、西洋医学のような物理的な次元だけではなく複数の次元と係わっています。

 

 まず人の基本物質「気」「血」「津液」3種類と捉えます。

「気」とは、目には見えないけれど運動性を持った物質で、生命活動の主体(エネルギー)となるもの。

「血」とは、血液や栄養などの要素を含む物質で、全身を栄養し、特に精神活動を支えるのに重要なもの。

「津液」とは、飲食物から消化・吸収・化生された精微な水液で、人体を潤すとともに、血の構成要素ともなるもの。

 

 主にこの3種類の基本物質の生成・代謝・循環を介して、人体の各種構成要素や活動エネルギーが産出されます。

 

 この「気・血・津液」の生成・代謝・循環を調節している存在が、臓腑とそれに対応する経脈になります。ただしこの臓腑は、西洋医学でいう臓腑とはかなり異なった概念になりますので注意してください。

 

 すなわち中医学における「人の生理」は、主にこれらの臓腑とその対応経脈により調整され、「気・血・津液」を介して維持されていると言えます。

 

 ただし臓腑や経脈は、「気・血・津液」を調整する一方で、逆に「気・血・津液」によって維持され、主に「気」によって機能が促され、「血・津液」によって滋養されます。

 

 またこれらの生理システムは、陰陽五行思想の原理(万物は相反する性質で相互依存する陰と陽からなるという陰陽論と、この原理から派生した万物は木火土金水で象徴される5種類の要素から成りかつそのうちの優位な要素の性質を帯びるという五行理論)に基づいています。

 

 よって、この生理システムも陰陽五行に分類することが出来ます。

 上述の基本物質も陰陽で表現することができ、主にその運動能力の違いから「気」「血(津液を含む)」に区分されます。

 

 また人の生理機能器官は5種類存在し、それぞれ木行火行土行金行水行で象徴されます。

その各生理機能器官も陰性の「臓」(順に肝、心、脾、肺、腎)と陽性の「腑」(順に胆、小腸、胃、大腸、膀胱)に分かれています。

 

「腑」は、飲食物を運搬・消化し、必要なものを取り分け、要らないもの(カス)を排泄する為の器官です。

「臓」は、「気・血・津液」を生成、代謝、貯蔵する為の器官です。

 

 また「経脈」とは、主に各臓腑気血を全身に伝導し、循環させる為にあり、臓腑の数と同じ10種類存在します。

 

 以上の内容をまとめると以下のようになります。

 

木行は、陰性の肝と肝経脈、陽性の胆と胆経脈、

火行は、陰性の心と心経脈、陽性の小腸と小腸経脈、

土行は、陰性の脾と脾経脈、陽性の胃と胃経脈、

金行は、陰性の肺と肺経脈、陽性の大腸と大腸経脈、

水行は、陰性の腎と腎経脈、陽性の膀胱と膀胱経脈。

  

 これらの各行の臓腑経脈は、一対となって共通の生理機能を担っています。

 

 まず五行の陰と陽の象徴である水行火行からその生理機能を説明します。

 

 水行の代表である「腎」は、「精」を蔵し、骨(髄)を主ると言われます。

この「腎精」とは、先天のとも言われ、生殖や発育の為の生命物質であるとともに、外邪の侵入を防ぐ「衛気」の構成要素となったり、「血」に化生することもあります。

 つまり栄養度の高い物質(例えばアミノ酸やタンパク質)を意味し、その一部は「心」で化生されて「神」(詳細は後述)が造られます。

 

 このように水行腎・膀胱系は、すべて生命機能を維持する為の最重要物質である「精」を統括することを主機能とし、すべての臓腑を滋養することで強い体を維持し守る力(免疫力)を保ちます。そのほか泌尿器系の機能を介して「津液」も統括しています。

 

 また膀胱経脈は、「膀胱」の尿の貯留と排泄作用を助けるとともに、関連組織や器官に気血を伝導することで滋養し、その機能維持を図り、体の外周では外邪が侵入を防ぐ為に働いています。

腎経脈は、「腎」「気血」「腎精」を含む)を伝導することで、に関連する組織や器官(耳や骨髄)の滋養・機能維持や、衛気の伝導によって外邪の侵入を防いだり、すべての臓腑を滋養・機能維持を図っています。

 

 つまり水行(7.8種)は、戦いや守備力と非常に係わりが深く、勝負に拘ることが伺われます。

 

 

 火行の代表である「心」は、5行の中心的な存在で、「神」を蔵し、を主ると言わます。

「神」とは、活力(精気)を意味し、主に脳の機能を支えるものです。

 もともとは、腎精より生じた骨髄からできており、骨髄の海と呼ばれ、生殖組織の一種と考えられています。

 従って、「神」は、脳の機能を介してと交通し、生殖機能に深く係わっています。さらに「心」は、経脈によって直接「腎」の生殖組織と交通することで生殖機能を司っています。

 

 このように火行心・小腸系は、活力(精気)の本質である「神」を蔵し、有神により精神意識活動が堅調である時には、しっかりとした脈を発することで、全身の「気・血」の循環を司ることを主機能とし、これにより全身の代謝活動を支えたり、生殖機能体温調節機能を司っています。

 

 また小腸経脈は、「小腸」「受盛化物」作用(飲食物から脾で取り出された精微物質以外の残りを受け取り、清と濁に分別し、清は膀胱に送り濁は大腸に送ること)を助けるとともに、関連組織や器官に気血を伝導することで滋養し、その機能維持を図っています。

心経脈は、「心」と係わる組織や器官(舌、脈管)を、気血を伝導することにより滋養し、機能維持を図っています。

 

 つまり火行(9.10種)は、全身の代謝活動、中でも生殖機能と係わりが深く、愛情や喜びに拘ることが伺われます。

 

 

 次に、金行の代表である「肺」は、「気」を蔵し、皮を主ると言われ、人体において「気」を統括しています。

 

 このように金行の肺・大腸系は、「気」を蔵し、呼吸だけでなくを司ることで皮膚を通して気をやり取りし、取り込んだ「清気」(酸素など)を全身に配分することを主機能としています。

そのほかで作られた「津液」を肺に貯蓄(津液をスポンジのように貯める)し、「肺」から呼吸のリズムに合わせ全身に「津液」を散布します。

 

 また大腸経脈は、「大腸」の呼吸を補助する機能と飲食物のカスを排泄する機能を助けるとともに、関連組織や器官に気血を伝導することで滋養し、その機能維持を図っています。

肺経脈は、「肺」と係わる組織や器官(舌、脈管)を、気血を伝導することにより滋養し、その機能維持を図っています。

 

 つまり金行(5、6種)は、呼吸活動(清気の分配)と係わりが深く、気配りに拘り、社交的である一方、心配性であることが伺えます。

 

 

 次に、木行の代表である「肝」は、「血」を蔵し、を主ると言われ、人体において「血」を統括しています。

 

 このように木行の肝・胆系は、「血」を蔵し、循環するの量を調節するとともに、肝気の疏泄作用(軟らかく弛める作用)により気血が全身隅々まで循環するよう調節することを主機能とし、全身の隅々まで気血を運搬することにより、脳や神経系の機能を統括するとともに、すべてのを育て滋養しています。

 そのほか大量の血液を肝に集め、代謝や解毒活動などを行っています。

 

 また胆経脈は、「胆」の胆汁の作用(消化促進および初陽の昇発=すべての臓腑の陽気は胆から始まる)を助けるとともに、関連組織や器官に気血を伝導することで滋養し、その機能維持を図っています。

肝経脈は、「肝」と係わる組織や器官(目、筋)を、気血を伝導することにより滋養し、その機能維持を図っています。

 

 つまり木行(1.2種)は、脳や神経系の機能と係わりが深く、思考活動を司ることから、評価や善悪(真理)に拘ることが伺われます。

 

 

 次に、土行の代表である「脾」は、「栄」を蔵し、肉を主ると言われ、人体において「津液」を統括しています。

 

 このように土行の脾・胃系は、飲食物から消化・吸収・生化することで「栄(精微物質)」を産出し蔵するとともに、その「栄」を他の臓腑の助けをかりて、「気・血・津液」を通じて全身に配分することを主機能とし、他の臓腑を栄養することで間接的に全身の生理機能を支え、さらに「肉」組織を生じるとともに養っています。

 

 また胃経脈は、「胃」の飲食物を受け入れて腐熟・化生させる機能を助けるとともに、関連組織や器官に気血を伝導することで滋養し、その機能維持を図っています。

脾経脈は、「脾」と係わる組織や器官(唇、肉)を、気血を伝導することにより滋養し、機能維持を図っています。

 

 つまり土行(3.4種)は、消化から気血津液の生成と係わりが深く、食事に対し拘ることと、これら消化器官が人体の感情中枢の存在場所に位置することから、感情(特に好嫌)が豊かであることが伺えます。

 

 今回で「中医学の生理」について簡単にまとめましたので、次回は健康や病気における「五行類型論(体癖)」の活かし方を具体的に述べたいと思います。

 

 

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